MRIとは 核磁気共鳴イメージング NMR 緩和時間 CTスキャン T1 T2 強調画像

MRIとは

 MRI とはどういう機械でしょう。断層写真をとる検査には,前項で述べたCT スキャンというものがあり,MRI に先駆けて開発されました。CT スキャンは,X線を多方向からビーム状に照射してX線吸収の度合いを得,コンピュータでいわば連立方程式を計算し,画像を構築する機械です。CT スキャンは,原理としては簡単と言えます。ところが MRI の原理は大変複雑で,実は医師の中で十分に理解している方は,極めてわずかしかいません。まあ,画像作製原理は物理学者に,数値解析は数学者に,機械を作るのはエンジニアにお任せして,できあがった写真をどの様に利用するか考え,経験を積み重ねることにより診断技術を上げてゆくのが医師の役目と言えるでしょう。原理を理解することは,一般の方には更に難しいことですが,せっかくですからほんの少しだけご説明しましょう。MRI は核磁気共鳴イメージングの略で,NMR(核磁気共鳴)現象を利用した画像作成法です。NMR とは,ある種の原子核を均一な静磁場中に置いた場合に,特定の周波数の電波エネルギーを選択的に吸収する現象です。NMR は原子核の電波に対する共鳴現象として捉ることができ,日常しばしば経験される,たとえば音叉や,振り子の共鳴現象と基本的に同様の現象です。エネルギー照射により共鳴した物質は,波動エネルギーを吸収して励起状態になります,照射が止まると吸収したエネルギーを同じ周波数の電磁エネルギーとして放出し,もとの状態へ戻ることになります。物質によって戻り方が異なり,戻り方の情報を集めることによって画像を構築してゆくのが MRI と言ってよいでしょう。MRI 画像のコントラストを決める要素が,エネルギーの緩和時間 T1 と位相の緩和時間 T2 であり,原子核の総量や,流速がそれに影響を与えます。情報の集め方によって,画像の濃度が異なり,例えば脳脊髄液は,T1 の違いを利用した T1 強調画像では黒く写り,T2 の違いを利用した T2 強調画像では白く写ります。この両者以外にも画像処理方法があり,それらを使い分けることによって,病気を見つけ出します。
 MRI の機械は,CT と同じようにドーナツ型をしており,穴に体を入れることによって撮影します。MRI は CT に比べて撮影に時間がかかり,画像処理において技師の技量が多少影響します。MRI は音が大きいのが欠点で,「工事現場にいるよう」と形容されることもあります。また,チタン等の例外を除き,金属が体に入っていると検査をすることができません。ペースメーカー等の体に付いた金属はもちろんのこと,検査室内には金属を置くことができません。MRI 検査室内の磁力はすさまじく,室内に消火器を置くと飛んでいってしまいます。

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