脳卒中とは ペナンブラ アルツハイマー型認知症とは レビー小体型認知症 変異型クロイツフェルト-ヤコブ病 ラクナ梗塞 動脈瘤
MRI でわかる病気
MRI が病気を見つけるのにどの様に役に立つのでしょう。
脳腫瘍では,ほとんどの腫瘍を画像として認識させることができます。また,脳腫瘍そのものだけでなく,腫瘍の周囲の浮腫や,腫瘍による周りの構造物の圧排もわかります。
脳卒中はどうでしょうか。脳の血管が詰まると,数分で神経細胞は死んでしまいますが,健常な部分との間に,ペナンブラと呼ばれる,生き死にの中間的な細胞が存在する領域があります。この細胞は,早く血流を再開して救済すれば生き返る細胞です。一般に3時間以内に血流を再開させれば,ペナンブラの細胞を生き返らせ,病気を最小限に食い止めることができると言われています。MRI の画像処理方法のなかに,拡散強調画像と灌流画像というのがあり,これらを組み合わせることにより迅速に脳梗塞かどうか,抗血栓療法が効果がありそうかを判断することができます。ただ,脳出血か脳梗塞かの鑑別は,CT スキャンの方が行いやすく,CT と MRI の両方の検査をして,治療法を決定することも有用です。前項で述べた外傷による血腫は,急性期は CT が,慢性期は MRI が発見に有用な検査法です。
昨今話題になっている,認知症はどうでしょう。認知症では一般に脳の萎縮がみられ,脳室も拡大してきます。認知症によって,萎縮する部分が異なり,病気を診断する手がかりとなります。脳の前の方は前頭葉,側面は側頭葉,後ろ側は後頭葉,てっぺんの部分は頭頂葉と名付けられています。アルツハイマー型認知症では,側頭葉と頭頂葉の後ろの方の萎縮がみられます。また,脳の下の方にある海馬という記憶に重要な働きをする部分の萎縮が強いのも特徴です。アルツハイマー型の認知症は,一般に人格は保たれますが,前頭側頭型認知症という認知症は社会性の低下や抑制の欠如が目立つ疾患で,MRI
を撮ると,前頭葉を中心とした萎縮がみられます。レビー小体型認知症という疾患があり,認知症ではアルツハイマー型に次いで多いとも言われています。この疾患は幻視がしばしば起こることを特徴とします。MRI
上は,びまん性に萎縮がみられるものの軽度に止まっています。BSE が人に感染して発症する変異型クロイツフェルト-ヤコブ病では,MRI で脳の中央部の視床枕と言われる部分に異常が認められるのが特徴です。認知症に至らなくても,高齢の人の
MRI 写真では,直径数mm程度の小病変が多数みられることがあります。これは,ラクナ梗塞と言う小さな脳梗塞です。これがある人は,血圧の是正が必要です。動脈硬化が関与している人もありますので,高脂血症や糖尿病があれば十分に治療をした方がよいでしょう。
MRI の撮影法を工夫することによって,血管だけを描出することができ,MRA と呼ばれています。脳の表面には,脳に酸素や栄養を与える動脈があります。この動脈の一部が弱くなってふくらんでくるのが脳動脈瘤です。一般に,血管の分岐部にできやすく,形成には遺伝的な要素もあるようです。動脈瘤は大きなものほど,血圧が高い人ほど破れやすい傾向にあり,動脈瘤が見つかった時は,まず血圧を下げることが治療の第一歩となります。治療法には,開頭してクリップで動脈瘤を止めてしまう方法と,カテーテルという管を血管に入れて,動脈瘤の中を血栓で詰まらせてしまう方法とがあります。いずれの方法がよいかは,ケースバイケースで,優劣はつけかねます。それよりも問題なのは,いずれの手術も合併症が起こりうるので,手術した方がよいか放置しておくのがよいかどちらがよいか判断がつきにくいことです。大きな動脈瘤は手術が勧められますが,破裂する確率がよくわかっていないので,中間の大きさの動脈瘤に関しては,医師の側も確信を持って指導できないのが実情です。
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