大腸癌 便潜血検査とは 痔

大腸癌と便潜血検査

 近年,大腸癌は非常に増加してきており,2000年度には全悪性腫瘍の男性で11.1%,女性で13.8%を占めるようになりました。大腸癌での死亡率は,40年前に比べ男性で6.2倍,女性で4.5倍増加しています。大腸癌増加の理由として,食事の欧米化(脂肪の多い食事,低食物繊維食)が指摘されてきましたが,最近の研究ではそれほど単純ではなく,運動不足,赤身肉(牛肉・豚肉)の過剰摂取,アルコール多飲などが考えられています。
 大腸癌検診で行われる便潜血検査は,便塊との接触で腸管の腫瘍が損傷して起こるごく微量の出血を検出する検査です。癌組織は正常な粘膜に比べてもろいので,わずかな刺激でも出血しやすい,という性質を利用しています。
 通常は,2日法といって2回便を採取していただき,そのどちらか一方でも潜血反応が陽性の方には,大腸内視鏡検査などの精密検査をお勧めいたします。便潜血検査が陽性に出た場合,再度検査をして異常でないことを確認したいという方がおられますが,これは意味がありません。再検で,便潜血陰性という結果が出ても,陽性の結果が一度出たという事実にはかわりはなく,何の情報も提供しません。
 便潜血検査だけで判断した場合,進行癌の約10%,早期癌の40〜60%は見落とす可能性があり,便潜血検査が陰性であっても大腸癌の存在を否定できるものではありません。便潜血検査では,陽性か陰性かによって,大腸癌の存在する確率が高いか低いかを見ているに過ぎないのです。大腸癌の発見には,便潜血検査だけでなく,日々の注意も大切です。便通異常(最近便秘や下痢になってきた,便が細くなったなど)や肛門から出血があった場合,それが痔だと思っても一度は精密検査を受けていただくほうがよいでしょう。たとえ,痔があったとしてもその奥に癌が潜んでいる可能性があり,慎重な対応をすることが望まれます。
 一般に検査の感度を上げると病気の発見率は増えますが,大腸癌検診に限ると,必ずしもそのようにはなりません。便潜血検査は,感度を上げすぎると,良性腫瘍でも陽性になり,大腸癌を見つける目的にそぐわない結果となります。早期癌の発見のためには,便潜血検査はほどほどの感度がよく,複数回行うことにより,また毎年受けることにより見落としを防ぐことが大切です。

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