PIVKAUとは 凝固因子 プロトロンビン ビタミンK 肝細胞癌

PIVKAU

 出血した時に,止血するためには血小板という血球と,凝固因子という物質が必要です。この凝固因子は,12種類知られており,そのうちのU(プロトロンビン),Z,\,]と名付けられた因子は,ビタミンKの存在下に肝臓で合成されます。ビタミンKは,主に腸内細菌にて作られて,一部は食品より摂取され,胆汁酸とともに吸収されます。ビタミンKを合成する腸内細菌が減少した時,胆道が閉塞して胆汁酸がなくなった時,ビタミンKの作用を阻害する薬物を服用した時は,肝臓での上記凝固因子の合成が正常に行われなくなり,異常な凝固因子ができてきます。この異常な凝固因子を protein induced by vitamin K absence or antagonist と言います。通常は PIVKA と略し,たとえばU因子の場合は,PIVKAUと呼びます。このことから,PIVKAUという検査は,ビタミンKが欠乏しているかどうかの診断に用いる検査として開発されました。ところが,ビタミンKの不足がなくても,肝細胞癌の多くは正常な凝固因子を作れず,PIVKAUを産生することがその後わかりました。この性質を利用して,肝細胞癌を診断しようというのが,PIVKAUの値を測定する目的です。肝臓に腫瘤を作る病気には,胆管細胞癌・転移性肝癌のような悪性疾患から,血管腫・肝嚢胞・限局性結節性過形成のような良性疾患まで様々あります。しかし,PIVKAUが上昇するのは,肝細胞癌のみであり,腫瘤の鑑別に役立ちます。PIVKAUの正常値(基準値)は,28mAU/ml 以下とされ,肝細胞癌の6割ほどが,PIVKAUが上昇します。肝細胞癌の多くは,B型慢性肝炎・C型慢性肝炎・アルコール性肝炎等の慢性肝疾患をベースに発生しますので,このような疾患を持った方は定期的にPIVKAU等の腫瘍マーカーをチェックすることにより早期に肝細胞癌の発生をとらえることができます。ワーファリンという薬剤は,ビタミンKに拮抗することにより,肝臓での凝固因子の生成を落とし,血栓症を防ぐ働きをします。しかし,その作用故にPIVKAUが上昇しますので,要注意です。
 別項の,AFP(α-フェト蛋白)も肝細胞癌の診断に役立つ検査であり,肝細胞癌の3分の2が陽性になります。PIVKAUと AFP は,独立して変動するため,両者を併用すると肝細胞癌診断の感度を上げることができます。AFP の代わりにより肝細胞癌に特異性の高い AFP-L3 と併用することも有用です。

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