鉄欠乏性貧血 鉄剤 網赤血球とは フェリチン ビタミンC 制酸剤 再生不良性貧血
貧血の人は,鉄剤を服用すればいいのですか
鉄が不足することによって起こる鉄欠乏性貧血では,鉄を食品や薬剤により体に取り込むことにより貧血は改善します。鉄剤を服用すると,まず網赤血球という幼若な赤血球が増え,次第にヘモグロビンが上昇してきます。その次に血清鉄の値が回復し,最後にフェリチンが正常値に戻ります。大切なことは,フェリチンが十分に回復するまで鉄剤を服用することで,ヘモグロビンが回復した時点ではまだ,体内の鉄は不足しているということです。鉄欠乏の原因や程度にもよりますが,フェリチンの回復には少なくとも数ヵ月を要します。鉄剤は,ビタミンCと併用すると吸収がよくなり,制酸剤と併用すると吸収が悪くなる傾向がありますが,最近の製剤の中にはほとんど影響を受けないものもあります。注射により鉄を補給することもありますが,過剰投与のリスクもあり,経口投与が何らかの理由でできない時に限ります。
逆に,鉄が十分にあるにもかかわらず起こる貧血では,鉄剤を服用しても改善しません。例えば再生不良性貧血では,鉄が赤血球製造に利用されないため,体に余っている状態です。この様な状態に鉄を補給しても貧血は改善せず,むしろ鉄の更なる過剰を招いて,様々な障害を引き起こします。また,鉄欠乏性貧血とよく似た検査結果を示す状態に,慢性炎症性疾患にともなってみられる貧血があります。血清鉄が少なく,一見鉄が足りないように見えますが,通常フェリチンは上昇しており,貯蔵鉄が過剰にあることを示しています。このような状態に鉄を補給しても,あまり意味がありません。
また,鉄欠乏性貧血の場合,その背後に癌等の悪性疾患が隠れている可能性があり,血色素と鉄が減少した原因を検索することが非常に重要です。
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