動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版
動脈硬化学会では,高脂血症の分類や管理目標値に関する診療ガイドラインを作成してきました。2007年2月に5年ぶりの改訂が行われ,「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2007年版」として発表されました。前回の2002年版と比較するといくつかの変更が見られます。まず,「高脂血症」という言葉が,「脂質異常症」に変わりました。また,これまで総コレステロール値が,診断基準と管理目標値に含まれていましたが,削除されました。総コレステロールより
LDL コレステロールの方が,より病態を表し,予後に関係すると判断されたためです。脂質異常症の病名及び診断基準は,以下のとおりです。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧140mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール <40mg/dl
高トリグリセリド血症 トリグリセリド ≧150mg/dl
この診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではない。
薬物療法の適応に関しては他の危険因子も勘案し決定されるべきである。
TCで判断する時は220mg/dl以上を高LDL-C血症とする。
原則としてLDL-C値で評価し,TC値は参考値とする。
LDL-Cは直接測定法を用いるかFriedewaldの式で計算する。
TGが400mg/dl以上の場合は直接測定法にてLDL-Cを測定する。
上記のごとく,LDL コレステロール,HDL コレステロール,トリグリセリドの基準値は,2002年版と変わりありません。
脂質異常症の管理目標値は,以下の表のようになりました。一次予防と二次予防に分類され,一次予防は,さらに主要危険因子の数により,3つのリスク別の群に分類されます。多少表現はかわっていますが,2002年版と大差はありません。尚,一次予防とは,脂質異常症に伴う合併症の発症を予防するための脂質管理,二次予防とは合併症を発症したあと,再発を予防するための脂質管理と考えていただいたらよいでしょう。
リスク別脂質管理目標値 (本HPでは、下表は正確には再現されません。)
治療方針の原則 カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dl)
LDL-C以外の主要冠危険因子 LDL-C HDL-C
TG
一次予防
まず生活習慣の改善を行なった後, T
薬物治療の適応を考慮する T (低リスク群) 0 <160 ≧40
<150
U
(中等度リスク群) 1〜2 <140 ≧40
<150
V
(高リスク群) 3以上 <120 ≧40
<150
二次予防
生活習慣の改善とともに
薬物療法を考慮する 冠動脈疾患の既往 <100 ≧40 <150
脂質管理と同時に他の危険因子を是正する必要がある。
(禁煙,高血圧や糖尿病の治療(日本高血圧学会および日本糖尿病学会のガイドラインに従う)など)
LDL-C以外の主要冠危険因子
加齢(男性≧45歳,女性≧55歳),高血圧,糖尿病(耐糖能異常を含む),喫煙
冠動脈疾患の家族歴,低HDL-C血症(<40=it=mg/dl)
脳梗塞,閉塞性動脈硬化症の合併はカテゴリーV扱いとする。
糖尿病があればカテゴリーV扱いとする
女性,高齢者の管理については,別項目で診療基準が示されています。また,家族性高コレステロール血症という,コレステロールが 300mg/dl を超えることもある遺伝的疾患の管理についても,別途示されています。
動脈硬化学会の新しいガイドラインで,「高脂血症」という病名が「脂質異常症」という病名に変更されましたが,本稿作成の時点では,他の学会のガイドラインや診断基準,保険請求病名,薬剤添付文書等が変更になったわけではありません。「高脂血症」と「脂質異常症」の用語が診療現場では混在しそうです。
注:本書籍では,動脈硬化性疾患診療ガイドラインと記されていますが,本HPでは動脈硬化性疾患予防ガイドラインに訂正いたします。
本HPでは、表は正確には再現されません。本書籍で、ご確認下さい。
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